vol.1


 元気だった?
って発せられた声が、何処から聞こえたのかわからなくて、私は辺りをきょろきょろと見回した。
周りの人達は立ち止まった私の事なんて気にする事なく、思い思いの方向へ忙しそうに歩いていく。
声が聞こえたのは私だけ?
気のせいだったのかな、なんてぽつりと呟き歩き出す。
その途端、携帯がけたたましく歌いだした。私は慌ててバッグの中から携帯をひっぱりだす。
あれ…?
この着信音って、誰だっけ。最近聞いてない気が…。
そう思いながら画面も見ずに電話に出た。
 「もしも…」
その言葉を遮るように
 「Fine, After Rain!」
曲名をつげる相手の声。
その時の私はどんな顔をしていたんだろう。
驚きと、嬉しさと、懐かしさと、自然と涙がこぼれる。
 「?!ぁ、え???!嘘!」
いる、絶対近くにいるんだ。何処だろう。
人ごみの中、目を凝らす。
後ろを振り返って、
また前を探して、
今度は右に顔を向けて、
次はひだ…
 「……バッ…バカバカバカァーーーー!!!!」
私の何かがピークになって、携帯を閉じて走り出す。
目の前には同じく携帯を閉じて、にっこり微笑む人がいて。
私はその人につっこんだ。
あったかい…。
涙が、とまんなくて。その人はそっと抱きしめてくれて。
 「ぅ、ぁ゙…。」
馬鹿みたく泣いて、まともにしゃべれない私の代わりに、その人が言ってくれた。
 「会いたかった。」
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